脳死、臓器提供、という重いテーマを扱っています。

別居状態にある薫子と和昌の幼い娘、瑞穂が事故でいわゆる脳死状態になってしまう。
一度は臓器提供を決意した二人だが、瑞穂の手が動いたように感じられたことからドタン場でキャンセル。
生きていると信じて延命治療を続ける選択をします。

瑞穂は最新科学によって、人工呼吸器ナシでも自発呼吸をし、コントローラーによって筋肉も動かせるようになる。
それを手放しで喜ぶ薫子。

しかし身内でさえも、実のところ瑞穂はもう死んでいると心の中では思っている者もいる。
こんなことをして意味があるのかと。

脳死は、脳死判定をして初めて認定されるので、その判定テスト自体をしなければ脳死とは認められない。
つまり生きているとみなされるわけです。

同じ状態なのに、そのテストを受けるか受けないかで生死が変わる。

まだ心臓が動いているのに、子供が死んでいるなどと思えるはずもありません。
脳死=人の死なのか。
とっても難しい。

あまり考えたこともなかったけど、脳死をもって死亡とするか心臓の停止をもって死亡をするか、これを読んでいるとますますわからなくなってきました。

だから最後の方で薫子が錯乱し、包丁を持ち出して「瑞穂を刺殺したらそれは殺人ということになるのか!」と問いただすシーンでは切なくなります。

みんなが瑞穂を死んだものとして見ている。
ならば死んだ人間を刺したら殺人犯になるのか。
もし殺人犯になるというなら、自分は喜んで刑を受ける。
そうしたら事故の日から今まで、自分が介護をしてきた日々は瑞穂は生きていたのだとお墨付きをもらえるから。

という薫子の叫びがグッときちゃうのよ。
母親は強い!

脳死……生き物ってなんと複雑な構造をしてるんでしょうかね。
心臓は動いているのに、二度と目が覚めないなんて。


東野圭吾さんの本は、ホントに読みやすい。
これだけ重いテーマでも、ぐいぐい引き込んでくれるし、登場人物たちの言う言葉はどれも的確で、わかりやすい。
とても頭に入ってきやすく、これが文章力ってものなのかな、と思いました。


ちなみに~、私は東野圭吾さんの本はガリレオとか加賀恭一郎シリーズとか、そういう刑事モノが好きなので、そろそろどっちかのシリーズ書いてくれないかな~。




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"円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと、疑いはじめる。
同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。
価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。
作家デビュー30年、80作目の到達点。

これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。
そしたらこんな作品ができました。 ――東野圭吾"

内容(「BOOK」データベースより)
彼女は計算して奇跡を起こす。東野圭吾が小説の常識をくつがえして挑んだ、空想科学ミステリ。

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東野圭吾さんの作品は、何と言ってもまず読みやすいのが一番の魅力。
これもアッちゅう間に読んでしまいましたよ。

「プラチナデータ」が好きな人なら、これも好きなんじゃないでしょうか。
科学要素が入っていますが別に難しくはありません。

登場人物がとても丁寧に描かれているのですが、ラストはちょっと駆け足になって無理やり終わらせたような印象を受けてしまう。
もうちょっとラストはねちっこく描いてくれても良かったかな~。

個人的には、犯人がちゃんと目的を遂行するエンディングにしてほしかった。
ずいぶんと綺麗に終わらせちゃったこと。

「これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。」と本人が仰るのなら、このラストは今までと何ら変わりがないので逆をいって頂きたかった。
2時間サスペンスドラマのラストだよ、これじゃ。


円華と関わることになる大学教授の青江がウザイ。
無理もないのはわかってるんですが、「なぜ?」「どうして?」「どういうことだ?」って質問してばっかで、あとで必ず説明するから急いで!って言っても「ダメだ」「信用できない」

こんなシーンが登場するたびにあって、あーもー!!うるせぇーー!!!
って、イライラしたわぃ。


えーと、私、東野圭吾さん大好きですよ。
こんなこと書いちゃってるけどサ。

東野さんくらいになると、アッと言わせるような凄いモノを書いて当たり前、っていうのがあるからプレッシャーも大きいだろうなぁ、と勝手に想像しながら読みました。



内容(「BOOK」データベースより)

ある町で発生した連続通り魔殺人事件。
所轄の刑事・中島と捜査一課の女刑事・小橋は
目撃証言による“コートの男”を追う。
しかし事件は、さらなる悲劇の序章に過ぎなかった。
“コートの男”とは何者か。誰が、何のために人を殺すのか。
翻弄される男女の運命。神にも愛にも見捨てられた人間を、
人は救うことができるのか。

いま世界が注目する人気作家。
デビューから13年、著者が初めて挑む警察小説。
人間存在を揺さぶる驚愕のミステリー!



この作家さんの本は初めて読みました。
前半すごく面白くて、これは当たり♪ と思った。

2人の刑事のやりとりがコミカルで笑えるんです。

しかし。
後半になって「……」となりました。

私はこの手の展開が苦手なのです。

複雑に絡み合った事件を丁寧にほどいていくミステリー要素たっぷりの前半に対し、後半は犯人の手記という形で、事件の全容が綴られています。

これねぇ、人間心理を理解できる人でないと面白くないと思うんです。
私なんかは単純なものが好きですから、こういうの理解できなくて「あぁ、こっち系の犯罪だったのか…」ってちょっと冷めちゃう。

逆に言うと、こういった人間の精神やら切なさやらを描いたものが好きな人なら、おそらく絶賛の出来栄えなのではないでしょうか。

ネタバレしますよ。




一言でいって、犯人イカレポンチなんですよ。
正確に言えばもっと複雑な人間心理なんですけど、ぶっちゃけ精神病んでる人。

こいつに殺された被害者たちも同じ穴の狢でして、従って被害者の心理も加害者の心理も、私にはさっぱり理解できなかったのです。
すみません、ひとえに私がアホなせいです。


犯人が病んでて、犯行の背景にそういったものがあるというのは、ミステリー小説であるなら私の中では反則です。
だって常人には思いもよらない犯罪心理なんて、読者が一緒に推理する余地なんかありゃしないじゃないですか。

だからこれはミステリーじゃなくて、人の切なさとかそういったものを描いた作品なんでしょう。


しっとりした、大人の負の物語が読みたい方にはオススメ。


6篇からなる短編集。

どれも短編の醍醐味があって、粒ぞろいの作品が揃っていました。

「夜警」

刃物を持って暴れた男を射殺した新人警察官。
その後、自分も斬られて死亡してしまうのだが、その背景にあった真相とは。

「死人宿」

自殺志願者が集まる山奥の宿。
宿泊客3人のうち誰かが置き忘れた遺書を発見する。
名前が書かれていないため、内容から持ち主を推測してみるが……。

「柘榴」

抜群の美貌でモテ男と結婚したさおり。
だが夫はまったく働く気のないダメ男で、2人の娘のためにも離婚を決意。
だが親権はなぜか夫にいってしまう。
そこには娘たちのある思惑があった。

「万灯」

バングラデシュの資源開発のため、エリート商社マンの伊丹はライバル会社の森下とともに、現地の村の有力者を殺害する。
おじけづいて日本に帰国してしまった森下をも、口封じのために殺害。
完全犯罪となるはずが、思いもよらなかった存在に追い詰められる。

「関守」

頻繁に車の転落事故が起こる峠に、都市伝説の取材でやってきた主人公。
近くのうらぶれた茶屋で、一人切り盛りするおばあさんに話を聞いていくと、事故で亡くなった被害者たちのことを全員知っていた。
そのばあさんの話の中に、都市伝説の真実が隠されていた。

「満願」

借金取りを刺し殺し、懲役8年を求刑された妙子。
最初は控訴する気でいたが、入院中の夫が亡くなったのを知ると控訴を取り下げ、自ら刑を確定させた。
妙子の思惑とは。


どれも最初から、この先どうなるんだろう?と思えます。
余分な文章とかがないので、サクサクと進んでくれて読みやすい。

派手な話ではなく、あ~そうだったんだ~、って頷く感じのお話です。